クールな弁護士の一途な熱情




駐車場を出て、みなとみらいの街を抜けて……10分ちょっと走り、オフィス街である関内のほうへとやってきた。

そして地下駐車場へ車を停め降りると、そこからほど近い大きなビルへと向かった。



まだ真新しいガラス張りの10階建ての建物に入り、エントランスを抜ける。

エレベーターに乗り5階で降りると、そこには壁に【伊勢崎法律相談所】の文字が掲げられていた。



「ここ、『伊勢崎』って……」

「うん。俺の弁護士事務所」



俺の、ってことは……つまり。



「べ、弁護士!?静が!?しかも自分の事務所持ち!?」

「あはは、失礼な反応だなぁ」



私が大きな声をあげて驚くと、静はその反応を返されることに慣れているように笑った。


スーツのジャケットに隠れていた社員証で、ピッとロックを解除し部屋に入る。

首から下げられたその社員証を見ると、そこには彼の顔写真と『弁護士 伊勢崎静』の文字。

それを見て、本当なんだと実感する。



まさか、あの静が弁護士になっているなんて。でもそういえば高校時代も、飄々としながらも常に成績は学年トップだった。

同じ歳でこんな立派な事務所も持って……すごいなぁ。

驚きながらも、彼に促され部屋へ入る。



白とベージュを基調とした、明るさのある事務所内。

いくつかに分かれた個室や少し広めの会議室を過ぎ、通されたのは一番奥にある部屋だった。



本棚に囲まれた中窓際にデスクがひとつ置かれ、テーブルを挟む形で向き合うソファから、ここが所長室のようなものだと察した。

濡れたまま入って大丈夫なのだろうか、と気後れする私に、静は特に気にせずタオルを手に取り差し出す。