「……はぁ」



落ち込んでいても仕方ないこともわかってるんだけど。



仕事も復帰するか辞めるかはっきりしないと、みんなにも迷惑がかかってしまう。

でも辞めるとなれば新しく仕事も見つけなくちゃいけないし、マンションも出来ることなら引っ越したい。



貯金はそれなりにあるけれど、恋人もいないうえに恋愛には懲りてしまった今、少しでも貯蓄を増やしておきたいとも思う。

あれこれと考えていると、自分が歩く先にふたりの男女の姿が見えた。



「どうしてわかってくれないの!?私はこんなに愛しているのに!」

「だから、わかるもなにも……」



なにやら言い争っているようだ。

感情的になり怒鳴る女性の声は静かな広場に激しく響き、周囲の人も目を向ける。

こちらに背中を向けた背の高いスーツ姿の男性は、そんな女性をなだめるように言葉をかけている。



まさに修羅場……別れ話で揉めてるところ、って感じかな。

巻き込まれたくないし、さっさと通りすぎよう。



避けるように、男性の横を通り過ぎようとした……その時だった。



「本当最低……人のこと不幸にしてなにが楽しいのよ!!」



さらに感情が昂ぶった女性は、叫びながら手にしていたショルダーバッグを振り回す。

それを避けようとしてよろけた彼はちょうど横にいた私にぶつかり、それに押されるように私の体は真横の噴水にバシャーン!と落ちた。