「だからって、仕事命だった果穂が仕事辞めてニートになるなんてねぇ」

「辞めてないから。休職中!」



そう。あまりに突然の裏切りがショックで、あれ以来食事も喉を通らず夜も眠れず……。

仕事も集中できなくなった私は、見兼ねた上司――つまり上原さんから休職を勧められ、とりあえず少し休もうと地元へと帰ってきた。



そりゃあそうだ。

だって同じオフィスの同じ部屋の中、結婚を考えた元カレとなにも知らない結婚相手が仲睦まじく働いているのを、毎日のように見せつけられていたのだから。



これまである程度のことは乗り越えられてきたさすがの私も、心のバランスがとれなくなった。

せめて宮田さんが産休に入れば、と思っていたけれど、それまでこちらがもたなかった。



うう、と頭を抱えた私に、映美は手元のお皿に綺麗に飾られたケーキをひと口食べる。



「けどさ、美味しいとこどりの元カレムカつくよねぇ。いっそのことその結婚相手にバラして修羅場にしてやればよかったのに」

「それも考えたけどさ……そんな気力もなくて」



彼を責めることも、喧嘩したりすがることも気力がいる。

なにより、幸せそうなふたりを見たら、それを壊そうとする自分が余計惨めにも思えてしまった。



グラスの中のミルクティーを飲みながら諦めたように苦笑いを見せる私に、映美の顔は不満げだ。



「まぁ、果穂がそれでいいならいいけどさ……」

「うん。心配してくれてありがとね」



なんだかんだ言いながら、映美も心配してくれているのだろう。そういう映美のいいところが、今だに仲が続く理由のひとつだ。

すると映美はふと思い出したように言う。