彼が私に触れる時


けれどどこか優しくて。


私はそっと彼の手に自分の手を重ねた。


前に少しずつ進もうとしている彼を

止めてはいけない。


私はまだ立ち止まったままで

進むことを諦めているから。


「ありがとう」


そっと彼の手を下ろす。


もう二度とない彼の温もりを

覚えていられますようにと心で思いながら。