ロイside



「ロイ様、あそこに………。」


運転手のロバートが怪訝な声色で話し掛けてきた。

ロバートの様子に外を見ると


「黒猫?いや………人?」


体が勝手に動いていた。

雨の中、倒れている人影に駆け寄っていた。

高級なスーツが汚れるのも構わず、その人影を抱き上げれば………華奢な女性だった。


「ロイ様、私が。」

「いや、いい。門を開けてくれ。このまま抱えていく。ダヴィに連絡を。」

「はい。」


雨が激しく降る中、黒のロングコートを着た女性を抱えて歩き出した。

女性の顔に激しく雨が当たるが、目を覚ます様子はない。

死んでいるかのように、身動き一つしない女性を早足で家の中へと運んだ。