「なぜ私と?」


そんな疑問がふと脳裏をよぎった。

婚約すること自体がトラウマの筈。

なのに何故?


「私も同じだと思わないの?」


ロイの表情が柔らかくなり、笑みを浮かべ始めたのだ。


「だってリンは俺を知らないだろ?」

「知らなかった。でも今はロイを知ってるよ。」

「俺も今はリンを知ってる。それでも一緒にいる意味が分かるか?」

「幸運を呼ぶ黒猫だから?」

「初めはそうだが、今は違う。リンは俺を頼ろうとしない。自分の足で歩いて行こうとする人だと知ってるからだ。」


優しい表情を見せるロイは幸せそうだ。

私がロイを幸せにしてるのだろうか?


「一目惚れだった。」

「えっ?」

「本当はリンに一目惚れしたんだ。」


ロイの告白に呼吸を忘れそうになるほど驚いた。