「ねぇ、君が異国の姫?」

「えっ?」


思わず足を止めた。

振り返れば、背後に同年代の男性が立っていた。

笑顔で私を見下ろしている。


「異国の姫?」


変なキーワードが聞こえ、思わず聞き返した。


「そう、黒髪にオッドアイの瞳。異国の姫みたいな女性が入社したって噂になってる。」

「………。」

「本当だね、異国の姫だ。」


固まってしまった。

そんな噂が?


「珍しい容姿だね。」

「………。」


にこにこと笑っている。

悪気はないのか?


「名前は?俺はアンダーソン。営業課所属。」

「リンです。秘書をしてます。それでは失礼します。」

「またね、リン。」


なんとフレンドリーな人なんだ。

シャノワールの人柄なのか?


『珍しい容姿だね』


私が異国の人だと思い知らされる。