「シャノワールでは珍しい黒髪、その上、服も真っ黒。黒猫が門にいるのかと思った。」

「黒猫?」

「そうだ。シャノワールでは黒猫は幸運をもたらすとの言われているんだ。」


黒猫……。

幸運をもたらすと言われているから花嫁?

そんな疑問が湧いた。


「でもロイなら花嫁には困ってないように見えるけど?」

「確かに困ってはいない。だが、それは私の容姿、財力、地位があってで……私自身を求めてくれてる訳ではない。」

「でも中には……。」

「人の気持ちなど他の人には理解できない。」


私の言葉はロイに掻き消された。

ロイの表情は見えないが、辛い経験でもあるような声色だった。


「レアード家はシャノワールを代表する財閥だ。それを目当てに群がる資産家は多い。現に見合い話は山程ある。」