「先輩が僕ってなんか気持ち悪いです。フツーに俺でいいでしょう?」

「え?そんなに馴れ馴れしくてもいい?」

稗田さんが私に聞いてくる。
うんうんと首を縦に振る。
まぁそんなに気にならないからいいんだけど…

「こいつね、もともと俺のこと社長って呼んでたんだよ。でも記憶がおかしくなってからは学生の頃みたいに先輩って呼ぶんだ。でも仕事に関してはそう支障がなかったし…変だよね。俺が香織ちゃんをさん付けで呼んだら怒るし…何だか俺は軽い男みたいだよね…」

軽い男って…
確かにそっちのほうが馴れ馴れしい。

「仕事は多少進度が違っても解る範囲だったんだ。それより家が違うからどこに何があるかわからなかったり、人間関係がわからないんだ。どこまで仲が良いのかわからない。」

本当に不思議だ。

「精神科や脳外科?に行かれたんですよね?そういう事ってあり得るんですか?」

「う~ん、あるにはあるらしいけどそんなに詳細ではなかったり全く知らない人のことを詳細に知ってたりもしないらしいんだ。香織ちゃんのこととか驚くほど言い当てるから。」