「あの人、本当のこと言うとすっごいホッとした顔して、無理やり抑えつけたんじゃなくて良かったって言ったんです…自分が抑えつけられたっていうのに。そして、僕のこと可愛いって、真剣に付き合ってみないかって、言ってくれたんです。」

涙が止まらない夏川くんにハンカチを差し出す。
そういえば稗田さんのハンカチ、私も借りっぱなしだったな。

「そっか、夏川くんが海外に行ってる間に真剣に考えてたんだろうね。田邉さんっぽい。それから10年かぁ。好きになると、とことん一途になるんだろうね。なんで忘れちゃうかなぁ。」

「はい。でも僕、不安だったんです。もともと弘人はゲイじゃないし、いつかやっぱり女性がいいって思う日が来るんじゃないかって…僕じゃ子供も産めないし…でも弘人は、日本では同性の婚姻は認められてはないけど地区によってパートナーシップ宣言って、申請すれば認定してくれる制度があって、それを利用して家族になろうってプロポーズしてくれたんです。嬉しかったのに、なのに、僕返事できなくて…最後に電話で話したときに女性と結婚して子供作って、誰からも認められる幸せな道もあるって言ってしまったんですよね。そしたら僕…忘れられちゃいました。ヘヘッ…うぅ…」