もう恥ずかしすぎてどんな顔をすればいいかわからずその場から逃げ出した。

「帰ります。今日はありがとうございました。」
そう言いながら急いで玄関へ急いだ。
でも稗田さんに腕を強く掴まれ、引き止められる。

「送って行くから。落ち着いて、ね?」

優しく言ってくれるけど私は首をふる。
振り返れない…

「ひとりで帰れます。」

そう言うとグイッと腕を引かれ強く抱きしめられる。

「ダメだよ。送って行くから。落ち着いて。このまま帰ったら次がなくなってしまう。」

次?次があるの?
いや、不誠実だ。そんなの…
私は首を横に振るけど力強く抱きしめられるだけで離してくれなかった…

「今までのままでいいんだ。楽しく食事をする仲で。ね、お願い。手を出しちゃってごめん、これじゃ田邉を責められないな…」

首を横に振る。
だって私が望んだのに…稗田さんはただそれに応えてくれただけ。

しばらくそのままでいたけど私が落ち着いたとわかってゆっくり体を離した。

それからまた手を繋いで車へ行くと待ち合わせした交差点まで送ってくれた。

「本当に今日は楽しかったよ。全てを嫌な思い出に塗り替えずに楽しかったことだけ覚えててね。」

「ありがとうございました。楽しかったです。」

無理に笑ってみせる。
手をふると車は走り出して行ってしまった。