私の名前は、稲川ことり(いながわ ことり)

今は、高校二年生。

普通の公立の高校に通っている。

最近、友達の笹川玲子(ささがわ れいこ)とハマっている事がある。

「ことり、今日も行くでしょ?」

放課後、玲子から声をかけられる。

「もちろん、早く行こう。」

私達は、すぐに教室を出た。

学校から、歩いて五分の所にあるカフェ。

そこが、私達が目指す場所だ。

人通りの多い車道を抜け、少し外れた小道に入る。

そこに、カフェ〈ミルク〉がある。

最初に玲子が見つけたんだけど、中々見つけられずに、一ヶ月ぐらいかかった。

見つけてからと言うもの、毎日のように〈ミルク〉に行っている。

今日もだ。

店の前に着いた。

店の外見は、少しボロい。

赤レンガのビルの一階部分。

ツタが巻きついていて、廃墟を思わせられる。

店の前には、小さい黒板が立ててあり、可愛いイラストが描かれている。

玲子と一緒に店の中に入る。

外見とは、反対に、オシャレだ。

アンティーク系の置き物が、店内に置かれている。

カウンターと、普通のテーブル席、両方ある。

カウンターも、テーブルも、少し年季の入った物だ。

店内には、良いコーヒーの香りが、漂っている。

「いらっしゃい、玲子ちゃん、ことりちゃん」

コーヒーカップを拭きながら、カウンター席の向こうから挨拶してくれるのは、この店のオーナー、清司(きよし)さんだ。

六十代だろう。

白髪がはえて、それなりの風格がある。

この店のデザインをしたのも、清司さんらしい。

「こんにちは、清司さん。いつものやつ、よろしくね。」

「私も、お願いします」

玲子、私の順にカウンター席に座る。

「はい、少々お待ちくださいね。」

清司さんは、早速作業に取り掛かった。

「ことり、今日の授業のノート見せて」

「もう、また寝てたの?」

玲子は、授業を全く真面目にしていない。

いつも寝ていて、今日も、先生に教科書で頭を叩かれていた。

私は、リュックから、ノートを取り出し、玲子に渡す。

玲子もノートを取り出して、写しだした。

店内は、私達だけ。

清司さんの作業する音と、玲子が必死でノートを写す音だけが響く。

私は、その間に、本を読む。

これがまた、有意義な時間なのだ。

「お待たせしました、ホットミルクと、コーヒーです。」

清司さんは、私達の前に、カップを置く。

玲子がコーヒーで、私がホットミルクだ。

玲子は、砂糖を入れる。

だけど、少しだけだ。

私は、これで十分甘いから、何も入れない。

「清司さん、聞いてくださいよ。先生が酷いんですよー。」

こうして、たわいのない話しが続く。

玲子が、こうして清司さんに何かを愚痴るのは、清司さんは、かなり的確なアドバイスをくれるからだ。

それに、こうして誰かに話すのも、悪くはない。