「絶対に嫌」
なぜ雪夜に指図されなければならないのだ。
イライラして睨んでやると、雪夜は笑みをこぼした。
それもまたゾッとするような怖い作り笑い。
「……ん」
慣れた手つきで私の後頭部に手を回し、自分の唇で私の唇を塞いできた。
強引で深い、そんなキス。
「悪いけど折れねぇから」
「……っ、何が」
「俺だけにされるがままのお前でいいんだよ」
危険な甘さが漂う、彼の言葉。
「もう自分の感情を殺してまで苦しむ必要はねぇよ」
ぐらり、と視界が揺れた気がしたけれど。
それは錯覚だった。
揺れたのは自分の心。
奥深くに眠る、自分の心が疼く。
さっきの女の子だってそう、雪夜だってそう。
私が必死で殺したことにしている“感情”を、どうして引き出そうとしてくるんだ。
「本当は辛いんだろ、知らない男に抱かれるの」
「……るさい」
「今のお前は自分を見失ってる」
「うるさい!」
うるさい、本当にうるさい。
「この人殺しが偉そうにものを語るな!」
まるで逃げるように。
その話を避けるようにして、感情のままに叫ぶ。
涙のせいで視界が歪み、雪夜の姿が捉えられなくなるけれどそんなの関係ない。



