「話が終わっても今日はお前のこと帰さねぇよ」
雪夜は怪我を負っている部分になるべく触れないようにして、私を抱きしめ離そうとしない。
「何言ってるの」
「お前、意外と周り見てねぇやつだから危ない」
「は?」
「気づいてなかったのか?
今日の男がお前のこと見てたの」
その言葉を聞いて思わず目を見開き、顔を上げる。
「い、いつから…」
「最初に見たのは三日くらい前。
それから今日の朝も見てたぞ?」
やっぱり気づいてなかったんだなと雪夜に呆れられる。
どうやら察知能力が鈍くなっているようで、こんな自分が腹立たしい。
反対に雪夜が気づいていたようだ。
「だから今日言おうと思ったけど、お前先帰るし」
「絶対裏があると思うでしょ…!」
そう簡単に信じられるわけがない。
「じゃあ今日でわかったろ」
「……何が」
「俺がお前を危険な目に遭わせたくねぇってこと」
片手をポンと頭に置かれ、優しく微笑む彼。
その姿にすら色気が感じられ、思わずドキッとしてしまった。
きっとこの色気のせい。
雪夜の容姿がいいせいだと、自分に思い込ませる。



