危険な愛に侵されて。




普段見慣れない格好をしているからだと頭で言い訳するけれど。

今日雪夜が助けてくれた時に、抱きしめられたことを思い出す。


謎の安心感に気づけば泣いている自分がいて。

本当にダサいと思う反面、胸が温かいと思ってしまう自分もいた。


「……御園?」

名前を呼ばれてハッとする。

無意識に雪夜の和服を掴み、胸元に顔を寄せていたからだ。


「……っ、な、い、今のは誤解だか……いたっ」


そんな自分が恥ずかしく、顔が熱くなりながら雪夜から離れたけれど。

勢いのせいで殴られた部分が痛み、思わず顔を歪めてしまった。


ああ、本当にダサい。
本当に恥ずかしい。

狂わされる。


目の前の男に、こんなにも狂わされるだなんて。



助けられ、優しくされるだけで復讐心が湧かなくなる自分も自分だ。

命を奪ってやろうと思う気持ちは、確かに強かったはずなのに───


「痛むだろ、大丈夫か?」
「……っ、お願い見ないでっ…」

今の私を見られたくない。

本当に恥ずかしくて顔が熱くなり、思わず手で顔を覆う。


無理だこんな状況、私に逃げ場なんてない。
だから相手に乞うしかないのだ。