「お前、何が目的だ?」
鋭く睨むような目つき。
この睨みに普通なら怯むかもしれないが、私は怯んだりはしない。
「あなたに興味があるの」
まるでずっと前から知っていたかのように話し、誘う準備を始める。
「自信家なあなたは、いったいどれだけすごい人なのかって」
決して自分から黒いスーツを掴んだりはしない。
あくまで言葉の誘惑をするだけ。
目の前の彼はそれほど欲に溺れていないため、普通の甘い誘いでは連れ出せないと思ったから。
「へぇ、喧嘩売るんだ?」
「新しい誘い文句です」
「ふは、面白いやつ」
彼もまたわざとらしい笑みを浮かべたかと思うと、この時初めて私の肩に手をまわして触れてきた。
「それならお前はどれだけ俺を楽しませてくれるんだろうな?」
私の肩を自分の元へと抱き寄せ、耳元で囁かれる。
思わずピクッと反応してしまい。
この瞬間に彼は手慣れているということがわかった。
絶対に食われてはいけない。
彼のペースに飲まれれば終わりだと思え。
そう自分に何度も言い聞かせ、彼の歩幅に合わせて私は歩き出した。



