「……ああ、忘れてた」
彼の言葉がふと疑問に思い、前回のホテルを思い出す。
確か彼は私の意識が遠のくまで覆い被さり、攻めてきて。
目が覚めるともう彼はホテルにいなかった。
つまり彼の背中を見る機会は一度もなく、むしろそんな余裕すらなかった。
もしかして隠そうとしていた?
「別に見ての通り、とある組の一員だけど」
特に笑うこともせず、私と目を合わせることもなく。
淡々と話すだけの彼。
けれど何故だろう。
彼の刺青───
正確には和彫りを見ていたら、とてつもなく手を伸ばしたい衝動に駆られる。
組とはつまり、ヤクザの一員ということだろう。
まだ高校生なのに。
彼はもうそんな大人で、暗い闇を生きている。
ただものではない。
今この瞬間だけは彼が復讐相手であることを忘れ、思わず背中に触れるため体を起こす自分がいた。
すごく惹かれる。
それほどに危険で美しい虎の和彫り。
そっと彼の背中に触れれば、突然のことで驚いたのかピクッと彼の肩が跳ねる。
「……怖くないのか」
変な質問。
私だっていつ命を狙われるかわからないため、怖いものはないというのに。



