「こんばんは」
雪夜涼雅がひとりになったのを見計い、私は彼へと近づいた。
「……ああ」
彼はチラッと私を見れば、またすぐ料理の置かれたテーブルに視線を戻した。
お腹が空いているのか、ガーリックシュリンプを口へと運んでいる様子。
「お酒は飲まないのですか?」
お酒を飲んでくれれば、こっちだって楽に進められる。
「酒は飲まない派なんで」
相変わらず私のほうへ視線を向けようとせず、食べることに集中しているのがまた苛立つ。
その性格のおかげか、先ほどまで彼を囲っていた女たちが離れていったのだろう。
「そうなんですね」
「そういうお前も飲んでねぇだろ」
“お前”───
乱暴な口調。
ここだと普通は“君”や“あなた”と呼ぶのが妥当だろう。
マナーというものを何も知らない男だ。
「もちろんです。
酔いがまわって流されるのは嫌なんで」
わざとらしい笑みを浮かべてやると、ようやく彼が私に興味を抱いたのかこちらを向いた。



