危険な愛に侵されて。




指先が震えるけれど。

涼雅が私の手首を強く握ったまま、解放してくれそうにない。


「なあ、お前が殺さねぇと意味ないんだよ。
だから早く復讐心全部俺にぶつけろよ!」

「……っ、バカじゃない!?」


正気を失っている彼の頬を、自由である左手を使って叩く。

乾いた音が部屋に響いた。


その衝撃で手首を持つ力が緩んだため、手を涼雅から離してナイフをベッドの下へ投げつける。


「ふざけないでよ!
いきなり殺せって何!?

そんなことできるわけないでしょ!私がどれだけあんたのことが…」


「……母親なんだ」


自分の気持ちを必死で言葉にして叫んでいると、彼が俯いたまま肩を震わせて小さく話し始めた。

思わず黙ってしまう。


“殺せ”と言った理由を教えてくれそうな気がして。



「静音の両親を殺したのは、俺の母親なんだよっ…」


ただ俯いて、自分の手をぎゅっと強く握りしめ。
震えている涼雅。


私は全身が石のように固まり、思考回路まで停止したようで。

その言葉の理解に遅れてしまう。