けれど私は子供ながらに傷ついて。
なら名前を変えてしまえばいいって。
その日、私はお父さんの部屋から勝手に電子辞書を取っていった。
少し前にお父さんに使い方を見せてもらい、便利で感動したことを覚えていたから。
ただ問題は漢字がうまく書けないこと。
文字起こしがまだまだ苦手で。
特に静音の“静”や、涼雅の“雅”は随分後から習った記憶がある。
結局私は簡単なほうの“音”
すずくんは“涼”を選び。
ガタガタの文字を電子辞書に書き込めば、最初はなかなか読み取ってくれなかった。
三度目にしてようやく読み込んでくれ、あまり使い方がわかっていない電子辞書を眺めていたら───
私の漢字は“おと”、すずくんの漢字では“すずしい”とひらがな表記されていて。
これだと思った。
『今日から私は“おと”、涼雅くんは“すずくん”にしよう』って。
すずくんはすぐに気に入ってくれ、ふにゃっと嬉しそうに笑ってくれたのだ。



