危険な愛に侵されて。





「本気で忘れてんだな」
「……雪夜が“すずくん”だってこと?」



ここにきてようやく口にしてみる。

雪夜が“思い出して欲しい”と言ったから、私もようやく“思い出していること”を言えたのだ。



「……お前、もしかして」

少しの沈黙が流れた後。
肩の重みがなくなった。


雪夜が顔を上げたのだ。



「だって雪夜が思い出してほしくなさそうにしてたから」

「なんだよ、それ」


「でも思い出したのは結構最近だよ?だって昔のすずくんはどこに行ったんだってくらいだから」


素直に話したけれど、雪夜はなぜか不機嫌になってしまう。

それほど黙っていたことに腹が立ったのだろうか。



「雪夜…?」
「全部思い出したのか?」

「全部っていうか、まあ俊二さんからも話を聞いたし」

「───じゃあその後のことも全部?」


ふと雪夜のトーンが落ちた気がした。
もう嘘はつけないと思い、素直に頷く。

すると雪夜は私の肩に手をまわしたかと思うと、そっと抱き寄せてきた。