「神田様、それがいけないとわかっておいでですか」
「別に誰も“痛めつける”とは言っていません。他の方法だってあります」
「精神的苦痛でもそれは拷問と同じです」
「───ああ、もういいです。宮木さんもうるさいですね」
二度、諦めたようにため息をついた神田。
宮木さんに対し見損なったとでも言いたげでもあった。
今度は宮木さんが命の危険に晒されるのではないか。
本気でそう思っていた瞬間。
「なんだ、拓哉。
もう帰ってきてたのか」
これもまた同じだった。
揺らぎのない静かな声音。
いつのまにか“そこ”にいた───
危険を察知したのだろう、神田がばっとそちらに顔を向けた。
どうやら彼自身も気づいていなかったらしい存在。
二階から階段を使って降りてきた、和服姿の雪夜だった。
「ゆき、や…」
情けない声。
それほどに目の前の雪夜に恐怖を覚える。
彼に対してこのような感情を抱くのは初めてで。



