今だって、ドキドキして。
私じゃないみたいだ。

思わずぎゅっと、後ろからまわしてくる彼の手を握る。


「……いきなりどうした?」
「う、うるさい。今はこうしていたい気分なの」

「へぇ?」
「大人しくしろって言ったのはあんたじゃん!」


少し私が素直になれば、こんな風に意地の悪いことを言ってきて。

本当にかき乱すのが好きな人間だ。



「そう怒るなよ」
「……嫌い」

こんな性格の悪い男、大嫌いなはずなのに。
嫌いになれないのが悔しい。



「嫌いとは言ってほしくねぇな」
「……っ、じゃあ余計なことしないで」

「ん」


少し寂しそうな声に変わったから、つい優しくしてしまう私も私。

それからも仕方なくこの体勢に耐えていると───



「静音ちゃん…!」

勢いよく襖が開けられた。


見ると未央ちゃんがキラキラと目を輝かせながら私たちの姿を捉えて。

けれどこの状態を見るなり頬を赤らめ、俯いてしまった。