「……ん」
するとその時、雪夜が瞼をピクッと動かしたかと思うと。
うっすらと目を開けた。
「ごめん、起こしちゃった?」
あまり刺激しないよう小さな声で話しかけたけれど、雪夜からの返答はなく。
ただぼーっと私を見つめるだけ。
「雪夜…?」
「……御園」
常夜灯の薄明るい光だけを頼りに視線を交じ合わせる。
雪夜が掠れた声で私を呼んだかと思うと、彼の頬に触れている私の手の甲に自分の手を重ね合わせてきた。
「何、寝ないと寝不足なるよ」
「御園」
「もー、何ってば」
弱々しい声に苛立つことはなかったけれど、いつもの調子で言葉を返す。
すると雪夜が目を細め、安心したように微笑んだ。
「……温かい」
「え?」
「ひとりじゃねぇなって」
聞いている私が苦しくなりそうだ。
それほどに彼の言葉は重い。
「……ひとりじゃないよ。
あんたが私を自分のものにしたんでしょ」
「した」
「それならひとりじゃないね」
「ああ、絶対俺のもの」
言葉は強引なくせに言い方はひどく優しく。
今度は嬉しそうな笑みを浮かべている。
もしかしたら寝ぼけているのかもしれない。