「そうだ、俺教科書もねぇから見せてもらっていいか?」
「……え」
「俺が机動かすし」
やけに積極的な彼。
確かに私は彼の隣だけれど、一応反対側にも彼の隣である生徒はいる。
しかも男子だし、真面目な子だから私なんかより絶対そっちのほうがいいはずなのに。
「いや、私より反対側の松前くんのほうが真面目だからいいかと……」
「そんなことないよ!静音はうるさいけどこう見えてクラス1位なんだから!」
この時ばかりは前の席である友達に、余計なことは言うなと叫びたくなった。
もちろん堪えるけれど。
「それなら尚更御園さんのほうがいいな」
パーティー会場では“お前”呼びだったくせに、今は“御園さん”と呼んでくる。
それがまた腹立たしく、睨みつけてやりたいぐらいだ。
「じゃ、じゃあ私でよければ……」
けれど復讐したいほど憎む相手に満面の笑みを浮かべる余裕はなく、引きつった笑顔になってしまう。



