けれど大丈夫なはずだ。
あの時会った私とは全然雰囲気や見た目が違うだろうから。
あんな一夜を過ごしただけで、顔の特徴まではっきり覚えていないだろう。
彼は特に経験豊富のため、いちいち女の顔を覚えることはない。
別に同じ人間に絞らなくても、多くの女が寄ってくるからだ。
「楽しそうなクラスだな」
そう安心しきっていたその時。
なんと彼がこちらを向いて笑顔を浮かべてきて。
「ちょ、雪夜くんこっち向いてるよ!?」
「……っ、ほ、本当!?え、夢じゃないよね!」
「静音に興味持ったんだよ!」
「嘘!夢みたい〜!」
わざとふにゃっと笑い、喜んでみせるけれど。
まったくもって嬉しくない、信じたくない。
彼が私に気づいてるだなんてそんなこと絶対にあり得ないと。
「じゃあ特別先生サービスしてあげよう。雪夜くん、あの一番後ろに座ってる騒がしい御園の隣に行ってあげて?」
「え、うそっ!やったじゃん静音!」
周りは先生の言葉に喜んでいるけれど、私はまったくもって嬉しくない。
というか嫌だけれど。
“女子高生”である私はこの性格のため、拒否することだなんてできない。



