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ざわざわと周囲が騒がしい。
それもそのはず、雪夜と登校しているからだ。
学校へ着くまでの間にもすでに数人の生徒たちから声をかけられている。
「……今日の笑顔、えらい下手くそだな」
それでもいつも通りの明るい私で言葉を返している───
と言いたいところだが。
実際のところ雪夜の言う通りうまく笑えていない。
だってもうすぐ祐樹と会う教室に着くのだ。
緊張してならない。
昨日、あんなことがあって。
最後は一切私のほうを見ずに帰った彼。
雪夜は大丈夫と言ったけれどやっぱり怖い。
「うまく笑えないよ、そんなの」
ぽろっと呟いてしまう弱音。
雪夜にもそんな姿を見せてしまうだなんて、本当に弱い自分。
「大丈夫だって言ってんのに」
「……自信ない」
「あんま落ち込んでると恋人らしいことするぞ」
「嫌だ」
結局こうやって雪夜に脅され、足を無理矢理動かして教室へと向かう。



