寝言ではない。
はっきりと意識のある彼からの“怖い”という言葉。
「夢が怖い…」
だからこの間も夢が原因で寝言で怖いと言ったの?
か細い声で、助けを求めるかのように。
「俺、意外と弱いから」
切なげに揺らぐ瞳。
気のせいだろうけれど、助けてと目が訴えているようで。
「へぇ、意外」
わざと興味のないフリをする。
深入りするのは良くないと、何度も自分に言い聞かせながら。
だって私には関係ない。
それなのに雪夜の過去を知ってどうする。
どうにもできない。
それほどに私たちの関係は深くないのだから───
「冷たいやつ」
「……何、慰めてほしいの」
「別に。今は大丈夫」
「はあ?何そのいつか慰めてもらうような言い方」
「限界が来たら、そん時はよろしく」
最後はわざと軽い感じで言ったように思えて、少し違和感を覚える。
らしくない雪夜。
彼だけではない。
ここまで深読みし、彼のことを考える私だって───
らしくない気がした。



