「だって、すごく綺麗」
「は?」
「雪夜の和彫り。いつ見ても綺麗だって思う」
思わず手を伸ばし、触れたくなるくらい。
その和彫りを目にするたびに心が揺るがされる気がした。
「……お前ってたまに怖いよな」
「え、なんで」
「たまに今みたいな野性的な顔するし」
「ちょっとそれは言い過ぎじゃない?」
野性って、人を獣のような言い方して。
少しばかり和彫りに見惚れていただけじゃないか。
「けど事実だからな。
お前、たまに理性飛ぶだろ」
「理性飛ぶって……それはあんたでしょ」
「お前が興奮させるから悪い」
「は?ふざけないでよ」
何が興奮させるだ。
先に手を出してむちゃくちゃにしてくるのは雪夜のくせに。
腹が立っている間にも雪夜は白いシャツに腕を通し、ボタンをしめる。
そのため和彫りは隠れてしまい、視界から消えてしまった。
少し惜しいと思いながらも、その気持ちをかき消すため床の隅に置いてある鞄を手に持つ私。



