危険な愛に侵されて。




けれど───


すずくんの母親は何枚も上手だった。


『ごめんなさい』と何度も両親に、それからすずくんに謝り。

『本当は殴ることしかできないこんな自分にも嫌気がさしていた』と泣きながら話した彼の母親。


暴力を振るっていた原因は夫と別居しており、その寂しさからだったらしい。

どう見ても演技に思えなかった。
それは子供の私だけではなく、両親共に。


そして母親は言ったんだ。

『夫ともう一度一緒に暮らすことになった。もう暴力は振るわないから、どうか誰にも言わないでほしい』と。


そのため、私の両親は条件をつけた。

すずくんのお父さんが迎えに来るまでは、私たちの家で預かっておくと。


そしたら数日後、本当にすずくんのお父さんがやって来たのだ。


その時、彼の父親の隣にいた母親は反省の色を浮かべ、気まずそうな表情をしていた。



それからすずくんの父親に『本当にご迷惑をおかけしました』と謝られ、さらにお父さんを見たすずくんは嬉しそうに駆け寄り、抱っこしてもらっていて。


本当に嬉しそうだったため、私の両親は“これで大丈夫”だと判断したらしい。


けれどそれ以降、私はすずくんと二度と会うことがないまま今日まで生きてきた。

そのためその後、どうなったのかは知らない。