「ん……」


気持ち良さそうに眠る雪夜が一瞬ピクッと動いた。

かと思うとゆっくり手を伸ばし、私の着ている浴衣を掴んできた。



いったいどんな夢を見ているのだろう。

不思議に思いながらもその手を引き剥がせば、今度は私の手を握ってくる。


簡単に解けてしまいそうなほど力ない握り方。
普段の雪夜から想像もできないほど、幼い姿だった。


いいものを見れた。
雪夜は寝ると弱くなるらしい。

思わず小さな笑みを漏らしながらも、この手は振り解かないでおく。


本当に幼くてかわいい。


「……待って…」
「……雪夜?」

その時、雪夜が何かを小さく呟いた。


けれど彼が起きる様子はなく、どうやら寝言のようだ。


すると今度は私の手を握る力も強めてきて。
今の彼は小さく思えた。


「……おと、ちゃん」



消え入りそうな声。
ドクンと心臓が大きく脈打つ。

もし今の言葉が聞き間違いでなかったのだとしたら。


“おとちゃん”
確かに雪夜はそう呟いたはずだ。

彼の言葉に心が引っかかる。
私はその言葉に聞き覚えがあったから。