三つ子のヤクザと狼娘 巻ノ零




「たまにね、あるんだよ。
お客の取り合いってやつ」


俺が喧嘩の様子を見ていると
親父が気づいて口を開く。

手元のグラスは
再び空になっていた。

親父は再びウィスキーを
グラスに注ぎ、混ぜる。


「…飲みすぎるなよ、親父。
ここの酒は全部高いらしいし」


さっきメニューを見たけど
値段設定がめちゃくちゃだった。


「安心しろ、奏太。
俺は金をたくさん持ってるんだから」


酔っているのか親父は
顔をほんのり赤らめながら
胸を張って言う。

俺はため息をついた。