「たまにね、あるんだよ。 お客の取り合いってやつ」 俺が喧嘩の様子を見ていると 親父が気づいて口を開く。 手元のグラスは 再び空になっていた。 親父は再びウィスキーを グラスに注ぎ、混ぜる。 「…飲みすぎるなよ、親父。 ここの酒は全部高いらしいし」 さっきメニューを見たけど 値段設定がめちゃくちゃだった。 「安心しろ、奏太。 俺は金をたくさん持ってるんだから」 酔っているのか親父は 顔をほんのり赤らめながら 胸を張って言う。 俺はため息をついた。