「オマエに
拒否権なんかないんだよ」


悪魔が笑いながら言った。

足で頭を踏みつけられ
顔を床に打ち付ける。


「暫くそうしてな」


痛みに、視界が揺らいだ。


「やめ…て」

「オマエは私の為に働けばいい。
…あぁ、私に逆らおうなんて
考えるんじゃないよ?」


女の白く痩せ細った手が、
私のカバンに伸びるのが見えた。

やめて……。
もう声が出ない。


「私の後ろに誰がいるか、
わかってるんだろ?

逆らったら…命はない。
わかってるだろうね?」


あぁ、そっか。
だからこの女は今日
わざわざここに来たんだ。

私は唇をかみしめる。
口の中は、血の味で満ちていた。


「…わかってるならそれでいい。
明日からもちゃんと働くんだよ」