帰りのHRを終えて部活へ行こうと荷物を手に立ち上がったタイミングでちょうどサッカー部2年の円藤先輩が後ろの扉のほうでひょっこり顔をのぞかせた。
それも不気味にニタニタしながら。

…ナイスひょっこり……
今にも軽やかなBGMが聞こえてきそう。

「あ、そら!」
「はいっ」
「明日の昼休み体育館集合だってみんなに伝えといて」
「わかりました」

午後練で一斉に言えばいいのにな、何で俺が……あぁ。

「葵、明日の昼体育館だとよ」
トイレから帰ってきた葵にさっそく伝えると、やっぱり葵も「午後練で言えばいいのに」と同じことを言っていた。
まあ理由はだいたいわかる。
単純に先輩面したかったんだろ。
顧問に頼みごとをされたという事実が先輩にとってとても輝かしいことだったのだろう。
気持ちはわからんでもないがな。
中学時代、二年生になって初めてできた後輩という存在に胸が躍った。
でもさすがに高校に上がってまで…。
まあまあまあ、普段から元気で幼さのある行動でサッカー部のボケ担当(笑)円藤先輩だ、これでこそ円藤先輩よ。
俺自身、そんな円藤先輩の無邪気な姿が好きだ。