「いってきまーす」
朝5時頃、まだ家族が寝ている中、小さめな声でそう言って家を出る。

「ふぁ〜ぁ…空翔おはよ」
数分歩いた先にある十字路で、中学時代からの友達である葵と合流してお互い挨拶を交わす。
「おはよ」
中学同様高校でもサッカー部に加入した俺達は、朝練のため、本当はまだ寝ていたいこの時間に家を出る。

「あーねみぃ…」

いつにも増して眠そうな葵。どうせ昨日徹夜でゲームでもしていたんだろう。
いつも以上に目が死んでいる…。
「昨日ドラハンしてたら寝る時間なくなっちゃってさぁ」
ほら、やっぱりな。

中学の頃からほぼ毎日一緒に学校へ向かう俺らに大した会話はない。

男にしては少し長めで、色素の薄い綺麗な細い髪に寝癖が付いている。

「…今日も絶好調だな、寝癖」

葵の寝癖は今に始まったことではない。
本人も気づきながらも直さない。
「あ?あぁ、どうせ朝練終わった頃には直ってるし」
男の俺でも見とれてしまう程に整った顔立ち。
だが性格の方はかなり男らしくガサツ、大雑把。こんな顔でこんな発言をするんだ、とにかくギャップがすごい。そこもまた世の女子達がときめくモテるポイントなのかな…。
「ハハ、確かにな」

4月の5時半はまだ少し薄暗い。
俺らは黙々と足を進める。