わたしは白い息を吐きながら、赤い手袋でサラの頭をこづいた。

「ごめん、カレン!でもカレンって今まで彼氏いないじゃない?ああいう女を知ってる男に少し手ほどき受けたほうがいいんじゃないかなってさ」

サラは金髪のストレートヘアを揺らしながら大げさな身振り手振りで弁解する。

痛いところをつかれたわたしはぐっと口を締めると、これまた大げさに薄く積もった雪の上をガシガシと歩き始めた。

「もういいよ。どうせこっちで彼氏作ったってあと1ヶ月で日本に帰るんだしさ…」

浅倉財閥の一人娘、浅倉 花恋、19歳。

丸顔の童顔で、とても19歳には見えないからイギリスではなおさら子供に見られる毎日。

お金には恵まれてても、愛に恵まれるのはいつのことかなぁってたまに自問自答する。

本物の恋をしてみたいって思うのに、寄ってくるのは浅倉財閥筆頭のパパの名を聞きつけた軟派でバカな奴ばかり。

そんな奴らには絶対に、わたしのファーストキスはあげない!って決めてた。

キスって愛を感じられるのかな……。

たとえちょっとしたキスでも、愛がないキスは嫌だ。

そんなこと、挨拶でばんばんキスもしちゃうサラみたいな外国人に言うと笑われちゃうんだけど…。