「頭痛が治ったろう?」

男は立ち上がってプールサイドに男が脱ぎ捨てていたと思われる黒のコートを取り上げるとわたしの肩にかけて言った。

「お前はどうやらファーストキスだったようだな。免疫のないお前にはきつすぎる快感だったはずだ。半分ヴァンパイアのお前でも下手すれば廃人になってしまうほどの。刻印をつけたヴァンパイアから適量の快感を与えられれば後遺症は消える。今はこれ以上の快感はお前には無理だよ」

半分……ヴァンパイア……!!

男はそう言うと壁のスイッチを押して室内の電気をつける。

するとテーブルの横にうつぶせに倒れているアレックが見えた。

「アレック!」

「気を失っているだけだ。じき目覚める。ヴァンパイアの獲物を横取りしてこの程度じゃ罪が軽すぎるがな」

男は不敵に微笑むとプールの外へと歩き始める。

「待って!!わたしの……血、吸わないの…?」

「残念ながらお前の血を吸うとどうなるか、未知数でね…。どちらにしても、その刻印は10日間は消えない。お前はまた10日間、私の獲物だ。その間、お前のキスの快感は私だけのものだ」

そう言ってさらに歩を進めようとする彼をわたしは必死で追い腕を掴んでいた。

「待って!あなたはわたしの何を知ってるの?なぜわたしは半分ヴァンパイアなの!?」

男はそこでキュっと立ち止まると。

風のように振り返りわたしの頬を両手で包み、

「デュオだ」

そう言ってわたしの下唇を吸うような軽いキスをした。