ヴァンパイア†KISS

理事長はわたしの反応を窺うように目を細めながら、例の金髪を撫で付けるしぐさをすると話し出した。

「この病院はね、もともと100年以上前にヴァンパイアを研究するために設立されたのだよ。私の曽祖父の時代あたりからその役割も薄まっていったがね」

冷静な口調からとんでもない話が出てくるな、とわたしは半ば呆れたような気持ちで聞いていた。

「ヴァンパイアなんて、ほんとにいたんですか?」

昨夜ほんもののヴァンパイアを見たばかりだというのに、他人の口からヴァンパイアという言葉が出てくるのが信じられなくて思わずそんな質問をしていた。

「ヴァンパイアは確かにこのロンドンにいたのだよ、ミス・カレン。彼らはとても用心深い種族でね。小説や映画にあるような人間の血を吸血するような行為もせずひっそりと暮らしていた。同時に同族の血を重んじる習性ももっていたために、人間の血が体に流れるのを嫌悪していた。特にヴァンパイアの中でも高貴な身分の者は、決して人間には手を出さなかった。下級の者はたまに悪さをしたがね。ヴァンパイアは、同族同士で吸血行為を行いながら生きていたのだよ。信じられるかね?ミス・カレン」

淡々と話す理事長は、まるで医者というより狂気を隠した科学者のようだった。