「シエル…そんなの辛いよ。お別れするみたいじゃない…」

うつむいて喉の奥でか細い声を出したわたしをシエルが抱きしめた。

「別れなんかじゃないよ、カレン。僕は死ぬわけじゃないし、カレンが死ぬわけでもない。また大きくなった僕といつか会えるんだから」

「ね?」と言いながらシエルは子供のような微笑でわたしを覗き込んだ。

シエルが赤ん坊に戻ってしまうなんて。

最初の条件と2つめで心が揺れ動く。

やっぱりそんなの……!

「シエル、そんなのやっぱり悲しいよ!シエルの犠牲が大きすぎる。100年なんて…」

「ルシアが言ってくれたんだ…」

「…え?」

シエルは月を見上げながらマリアのように優しく微笑んだ。

「僕が赤ん坊に戻ってしまっても、自分が育てる。100年でも200年でも、僕が大きくなるのを待つって…」

「ルシアが…」

「そんなふうに愛してくれる人もいるんだって僕は嬉しかった。だからカレン。僕が犠牲になるわけじゃない」

シエルの瞳が凛と光り、わたしの瞳をとらえた。

「それに、カレン。君にはきっと月の力が必要だ。ユーゴを止められるのは、君とデュオ兄さんしかいないと、僕は思っている」

「シエル……!」

「目をつむって、カレン。これで、全て終わりにしよう。僕も君も、生まれ変わるんだ」



………シエル……!!!