あれから、デュオがわたしに心臓の血をくれてから5日。

デュオはずっと眠ったままだ。

どうしたら目を覚ましてくれるんだろう。

わたしの血を飲ませたり、キスしてもいっこうに目覚める気配はなく、ただ時間が過ぎていくだけ。

焦りで、胸が軋むように痛い。

デュオがこのまま死んでしまったら…という不安が頭をもたげる。

「デュオ……お願い、目覚めてよ…」

ポタリ、と涙がデュオの頬に落ちた瞬間。

子猫の寂しげな鳴き声がベッドの上で聞こえた。

「エイダ…」

エイダが飼い主を失った哀しみを訴えるようにわたしの瞳をじっと見つめる。

「エイダは、カルロがいなくて寂しいのですね」

キィと開いたドアからエマとウルフが入ってきた。

二人は100年間ずっとそばにいたかのような自然な振る舞いで、見つめあい寂しげに微笑む。

「エマ…ウルフ…」

エマはそっとわたしの髪に触れ、優しく微笑んだ。

「カレン、ガイアの封印が解かれたようです。わたしとウルフの血を奪っていったユーゴによって…」

「ユーゴがガイアを!?」

驚くわたしの横にウルフが近寄る。

「ガイアを封印したのは私たちだ。あの場所を護る義務が、私たちにはある。今の兄にはヴァンパイアの誇りなど何もないだろう。私たちは行かなければならない…!」

「ウルフ、エマ、危険だわ!ユーゴはシエルの血を吸い、彼の月の力をも身につけたかもしれないのに!」

ウルフとエマはお互いに微笑み合う。

エマが言った。

「カレン、100年間待ち焦がれたウルフとの再会をわたしは果たすことができた。それは、カルロやあなたたちのおかげ。わたしとウルフには、ヴァンパイアの聖地『ヴァンパイア・キス』を取り戻す義務があります」

『ヴァンパイア・キス』………ガイアの奥深くにある、その華やかな巨大ダンスホール。

彼らの、夢の聖地。

そこで踊り、皆に祝福されキスをした者たちは、ヴァンパイアの王になる……という伝説の生まれた地。