カルロを包む炎がさらに勢いを増し、彼の姿が炎の中に霞んでいく。

「カルロ!!」

ウルフが叫ぶと同時に、轟音の中からカルロの声が飛んできた。

「行ってください!ウルフ様!!はやく!!」

狭くなっていく道を振り返ったウルフは、シエルを抱きかかえるとエマを先に促した。

3人が炎に今にも巻き込まれそうになりながら、こちらへと向かってくる。

ウルフたちが炎から抜け出しわたしの前へたどり着いた瞬間。

巻き上がる炎が一気に天を突くように燃え上がった。

「……カルロ―――――!!!」

泣き叫ぶわたしの耳に、微かに、聞こえてきたあどけない少年の声。

「…ワンツースリー、ワンツースリー」

カ……ルロ……。

炎の中、ゆらりゆらりと3拍子のステップを踏む少年の姿が見える。

「カルロ……あなた……ワルツを…」

100年前、ウルフに教えてもらったワルツ。

教会でわたしと出会った時にも踊っていたワルツ。

エマと踊ることができなかったワルツをあなたはそれでも。

……いつでも笑顔で踊っていた……!!

炎の中、カルロの微笑が見える気がした。

わたしには、わかる。

今、あなたは、微笑みながら踊っているのね、カルロ?

あなたの喜びはエマとウルフが幸せになること。

ねぇ、あなたはほんとうに、幸せだった……?

わたしの問いかけを、炎が残酷に焼き尽くしていく。