瞳をそっと開ける。

目覚めたわたしが一番に見た微笑みはこの世で一番優しい天使の微笑み。

カルロはふわりと微笑んで、言った。

「カレン。これでもうあなたは完全なヴァンパイアです。早く、デュオを」

「うん!」

ブルースが抱えているデュオを振り返り、自分の手首を噛み血を吸いだした。

この血をデュオに……!

口移しでデュオにわたしの血を捧げる。

デュオの喉にゆっくりと血が流れていくのを感じながら。

ひと息に飲ませ唇を離すと、わたしはデュオの顔を上から覗き込んだ。

デュオ、お願い、目覚めて……!!

デュオはそのまぶたに微かに反応を示したかのように見えたが、そのままピクリとも動かなくなった。

沈黙が流れる。

どうして……?

「カルロ……どうして?ヴァンパイアになったわたしの血は、心臓の傷も治せるんじゃなかったの……?」

「…わかりません。でも、もしかしたらデュオは、思っていた以上にヴァンパイアオーラを失っていたのかもしれません。それに彼はかなり深く心臓を突いたようですので…」

蒼く生気を失ったデュオの顔を撫でる。

デュオ!!

わたしがあなたに抱かれることができなかったから……?

わたしのために心臓を深く突いたから……?

………デュオは、全部、わたしのために……!!


ゴォォオオオオオオ!!!

「!?」

炎が勢いを増し、津波のように押し寄せる。

わずかに残されていたシエルたちへの道は………完全に閉ざされていた。

「……シエル!!エマ―――――!!!」