「オズワルド、お前を王などにさせはしない」

張り詰めた空気をデュオの声が切り裂く。

オズワルドはガラス瓶を理事長に手渡し、ゆっくりとデュオを振り返った。

「デュオ…お前のヴァンパイアオーラはだいぶ弱くなったようだが、お前がヴァンパイアの王になるとでも?」

デュオは仰向けに倒れているウルフを切なげに見つめながら答える。

「王は、ウルフにこそふさわしい。100年前、ウルフのワルツを見たもの達の歓声、拍手喝采。私はあれほどの喝采を他に知らない。それは、彼のワルツに彼の美しく強い心が滲み出ていたからだ。王は、彼以外にない」

オズワルドは片目を細めると、ゆっくりと剣の切っ先をデュオに向かって伸ばした。

「この死にぞこないが王か?笑わせる。奴はほっといてももうすぐ死ぬ運命だ。……いいだろう。奴が目覚めるか、このままくたばるか。それを待つ間、お前と奴の子らを痛めつけて遊ぶのも悪くない……くっくっく!」

オズワルドの禍々しいオーラが一気に膨れ上がるのを肌でピリピリと感じた。

彼は銀色の逆毛が憎悪を表すように波打つ。

ゆっくりとわたしたち3人を見回すオズワルド。

彼の視線がわたしの前に来るとピタリ、と止まった。

デュオがすかさずわたしを背に追いやる。

「デュオ!」

「その娘…お前の女だな?……これは面白い。私は恋人を引き裂くのがいっとう好きでね…」

……残忍。

彼はまさにその言葉にふさわしい。

思わずそんな言葉が浮かぶ。

「カレン、いいな。約束どおり、自分の命のことだけ考えろ」

……デュオ……!!