「ここよ、さ、行きましょ」

ベンツから降りてサラが指し示した先は、ロンドンで一番大きいという総合病院。

ロンドンの中心街にどーんとそびえ立つお山のような塊に、わたしは尻込みしながらサラを見上げた。

「ねぇ、サラ。頭痛といってもたいしたことないし、こんな大きな病院じゃなくてもいいよぉ」

「何言ってるの!昨日だって具合悪そうだったじゃない。パパが診てくれるから安心して」

サラはわたしの腕を引っ張りつつ歩幅を緩める気配はない。

「…パパって!?まさかサラのお父さんが診てくれるわけ!?だってこの病院の理事長でしょ?そんな大げさな!!」

わたしは歴史を誇るように自信ありげに大きく立てかけられている病院の名の入ったプレートを恨めしそうに見つめた。

『キングストン総合病院』

親友サラ・キングストンのひい・ひい・ひい・おじいちゃまの代から続いている由緒ある病院だ。

そんな病院の理事長自らが診てくれるなんて、安心どころか、緊張で卒倒してしまう!

なんて考えているうちに、わたしはあれよあれよと病院の中へと連れ込まれていた。