「これが、キングストンの城?」

シエルが呆けたような表情で眼前の城を見上げた。

目の前に聳え立つ闇の衣をまとったような巨大な古城。

前に来た時より、禍々しく見えるのは気のせいだろうか、とわたしは目を擦りながら城を見上げた。

「さすがにオズワルドだ。城を見事に禍々しい闇で覆ってしまった」

デュオが羽織っている黒のマントを風になびかせながらつぶやいた。

そのマントの下に、ちらりと銀色に光る剣が覗き、研ぎ澄まされた光を放っていた。

デュオの美しい銀髪に、その剣はとてもよく似合う。

ユーゴが襲ってきた時に持っていたのをシエルが奪ったものだと思い出した。

シエルはわたしが不安になってしまうほどの軽装で、オフホワイトのカジュアルな服に、なんの装備もない。

ただ、闇夜の中、時折バイオレットに輝く青の瞳が浮かび上がるその美しさに目を奪われてしまう。

ブルースとルドルフは全身黒の服に、それぞれお気に入りの剣を携えていた。

「さて、どうするか…」

デュオが城を前にして侵入経路を目で探す。

その後ろで、シエルが両腕を頭の後ろに組み、あっけなくパズルを解いてしまった子供のような表情で言う。

「いいんじゃない?正面で。こういうのは堂々と入るべきだよ」

それを聞いたデュオは片手で顔を覆うと、苦笑した。

「……くっく。お前、ウルフにそっくりだな。100年前と同じセリフを言うよ。『用心しないヴァンパイアも珍しい』」

「褒めてくれてありがとう、デュオ兄さん」

シエルがいたずらっ子のような笑顔でデュオに笑いかけた。

その時。

禍々しいオーラが城の上部からわたしたちを見下ろすように、濃く、闇深い視線を送りつけたのを感じた。