「カルロ!!カルロ、目を開けて!!嫌だ、嫌だよ!!カルロ!!」

髪を掻き毟り泣き叫ぶわたしをデュオは力強く抱きしめると、

「カレン、落ち着け!!カルロはまだ死んじゃいない!!背中から心臓をえぐられるその寸前、カルロの体は腕をすり抜けようとしたエイダを庇うようにわずかに反応した。そのわずかな動きが幸いし、心臓の芯の部分は免れた。…あとは、カルロの生命力次第、だ」

カルロの眠るその毛布の中から、エイダがひょっこりと顔を出した。

エイダは何かを言いたげにカルロを見つめながら、カルロの胸に顔を寄せる。

デュオはそれを見ると静かにつぶやいた。

「エイダは、カルロを助けようとしたのかもしれないな……」

「デュ…オ。わたしの血、カルロの役に立たないかな?ドクターはわたしの血は回復させる力がすごいって言っていた。もしかしたらカルロを救えるかもしれない」

デュオはわたしの涙をその長い指で拭いながら答える。

「恐らく、カレンの血でも無理だろう。カルロの傷は心臓の芯まではいかずに即死は免れた。だが、表面とは言え、心臓まで達したその状況は変わらない。彼を救えるのは、ヴァンパイアの心臓の血か、完全なヴァンパイアになったカレンの血しかない。だが、カレンがヴァンパイアになるには、カルロに吸血してもらうことが不可欠だ。こん睡状態の今のカルロには、それは到底叶わない」

「……こんなのって、ないよ―――!!」

ぽろぽろと涙を零し続けるわたしにデュオはピンク色の携帯を差し出した。

「カレン、この携帯に見覚えはあるか?」

携帯の待ちうけ画面。

そこにわたしとサラの並んで撮った笑顔の写真があった。