ヴァンパイア†KISS

デュオは先ほど打ったルシアの頬を片手でふわりと包んだ。

そしてすぐにその手を離すとぎゅっと固くこぶしを作って苦笑した。

「……もう、壊れてしまったのかもしれない、ルシア……」

「…おに…いさま?」

「私はお前が望むならなんでもするだろう…。お前のわがままも、気の強さも、愛している。エクスタシーを欲するなら…そうする。今までのように……」

ルシアは少しほっとしたように微笑むと、兄にまた口づけするように近づく。

だがデュオは片手の人差し指をルシアの唇に押し当てると言った。

「だが、カレンだけはだめだ」

……え……わた…し?

ルシアはそこで目を見開いて動きを止めた。

「ルシア、たとえお前でも、カレンを傷つけることは許さない」

「…お兄様…?」

「この百数十年生きてきた中で、私がタンゴを踊りたいと思った女性は……カレンだけだ。私は彼女とタンゴを踊るだけで、エクスタシーを得ることができるんだ。……ルシア、私は壊れてしまったんだよ……」

「お兄様!それならわたくしだってお兄様とタンゴを……!」

デュオは片手で自らの片方の顔を包むと物憂げにルシアを見下ろして言った。

「……私をこれ以上困らせないでくれ、ルシア。私にこの言葉を言わせるのか…?」

「……お兄様…?」

ルシアは不安げに兄を見上げた。

デュオは手を下ろし意を決したように瞳を開く。

「……私はお前を『妹として』愛している。私が心から『欲する』のは、お前じゃない」

パン!

と再び頬を打つ音が響き渡った。

そのままバタバタと部屋を出て行くルシアの靴音が静まり返った部屋に鳴り響く。

わたしはルシアに頬を打たれたデュオが頬を押さえることもなく立ち尽くしているのを見つめていた。