デュオはわたしの目の前まで来ると、片手でわたしの頬を包んだ。

「ただ…私はお前が傍にいると、不思議な気持ちになる。ワルツのように心が舞い上がり、そして、タンゴのように……」

そこでデュオは言葉を切る。

「タンゴのように…?」

デュオはわたしの手を取ると、屋根裏の真ん中へと引っ張っていく。

そして、月明かりに照らされたその顔で振り返ると、言った。



「情熱的に愛してみたくなる」




………トク……ン…!!

デュオはそのままわたしをホールドすると、ゆっくりとしたステップでタンゴを踊り出した。

「デュオ、わたし、タンゴはやったことがなくて…!」

「タンゴは、一つになる心だ。情熱のままに、心を溶けあわせ、相手も自分も愛の中に埋(うず)もれる瞬間、心は至福の快感に満たされる」

デュオ…………。

一つになる心。

時間も血のつながりも関係なく。

ルシアのような血のつながりも、長い時を一緒に生きてきたわけでもないけれど。

………わたしは、デュオとつながることが、できる……?


デュオはわたしをターンさせ、足を絡め、情熱的に舞う。

音楽がないのに、情熱的なタンゴの音楽が月から聴こえてくるようで。

わたしは必死にデュオの体に絡み付いていた。

「……あ!」

絡み合った足がもつれて、わたしは後ろに倒れそうになり声をあげた。

デュオはわたしを抱きとめると、そのままわたしを床へ倒しわたしの顔の両側に両手をついた。