ステージ上でパパはわたしを紹介すると、次にかずちゃんの父親である神藤明彦社長を紹介した。

「神藤氏は私の十数年来の友人で、私がつらく苦しかった時代も神のようにその手を差し伸べてくれました。本当に感謝しています。彼はこの度、日本のトップ3に入る自らの製薬会社を『神藤製薬』から『ガイア』という社名に変え、新たなバイオテクノロジーを研究する新会社を設立されました」

神藤社長はパパと変わらない年齢の50歳ほどで、その顔は彼のキャリアを物語るべくとても精悍でシャープだった。

「皆様、この度は私の息子、和希がこの浅倉財閥のご息女との婚約を勝ち取りまして、私もとても浮かれている心境です」

そこでどっと笑いが起きた。

「では、その不肖の息子、和希をご紹介させていただきます」

神藤社長が促すと、かずちゃんがステージそでから堂々とした表情でわたしの横へと歩いてきた。

「皆様、本日晴れて婚約を果たしました二人にどうか祝福の拍手を!」

ワーという歓声とともに、盛大な拍手が鳴り響いた。

かずちゃんはすごく優しい笑顔でわたしを見つめると、そっと手を握った。

わたしはなんとなく恥ずかしくて少しうつむいてかずちゃんの温かい手を見つめていた。

かずちゃんは、優しい。

ずっと変わってないね……。

「え~、盛大な拍手をいただいたところで、恐縮ですが、ここでもう一つ重大な発表があります」

神藤社長はおもむろに拍手を制するように言い放った。

会場がしんと静まり返る。

重大な発表?

なにがなんだかわからずただ神藤社長を見つめていると、

「私はこの度、新会社設立とともに、イギリス進出も果たしまして、その後ろ盾としてイギリス人の双子を養子といたしました」

あ…れ?

イギリス人の双子を養子ってたしかあの夜の仮面舞踏会の主催者もそうだってサラが言ってなかったっけ?

そんなことを思っていたわたしの目の前に。

「皆様、私の新しい息子と娘です!」