ちゅっ。
と、可愛らしい音がなり、わたしは腰をかがめた姿勢のまま、固まった。
「……え」
男の子はいたずらっぽく微笑むと「ありがと、カレン!」と言い残し、控え室を出て行った。
え……?
え……!?
「………口にキスされた…」
あんな小さな子からキスされたのが変な感じだったのと、あまりにも可愛らしいキスにわたしの顔は真っ赤になっていた。
……あれ、でもデュオの刻印がまだあるのに頭痛がしないや、なんて思いながらも、まぁあんな一瞬だったしねって自分で納得していた。
手元に残ったバイオレットのバラがとても綺麗に見えて、わたしはそのバラを自分の左胸に飾った。
「なんか、びっくりしてちょっとだけ元気でたかな?」
わたしはさっきの男の子を思い出してクスリと微笑んでいた。
「本日は、浅倉家の長女、不肖ながら私の娘である浅倉花恋のためにお集まりくださいまして、皆様ありがとうございます」
ホテルの一番大きなパーティー会場で、パパはとてもよく通る声をマイクに通して最初の挨拶をした。
会場にはパパの取引先関係の大企業の役員たちが100名ほど集まっていた。
立食パーティー形式で、丸いテーブルがあちこちに並んでいて、真ん中はダンスを踊れるように広く空けられていた。
最近人の集まる場所が怖かったわたしだけど、今夜はいつもよりはましな気がした。
どちらかと言うと、自分の婚約発表に緊張して手が震えている、そんな感じだった。


